色とりどり

 土曜日。

 せっかく学校が休みの日なのに、外では雨が降っている。

 ボールを持ってしょんぼりと立っている男の子の前に、お母さんがしゃがみ込んだ。

「今日はお家の中で遊ぼう?」

「うん」

「我慢できて偉いねぇ」

「……ぼく、あめはきらい」

「あらら」

 お母さんは困った顔をして、天井のほうへ視線を向ける。数分後、楽しげな眼差しで男の子に向き直った。

「雨の日にしかできない、楽しいことを探そう。まずは明日、私のお気に入りを教えてあげる」

 夜が深まっても、雨は静かに降り注ぐ。新緑の若葉からぽつぽつと雨雫が落ちて、やがて水溜りになった。

 翌日の昼。

「わあっ!」

 男の子が、公園の中央にある木を目指して走り出す。木の葉の一枚一枚に小さな水滴がついていて、宝石のように光っていた。

 近くの地面を見ると、水溜りができている。水面を覗き込むと、空を映して真っ青になっていた。日の光を反射して、丸い青空がきらきらと輝いている。

 男の子は、雲が水の中を泳いでいく様子をじいっと見つめた。

「きれい」

「気に入ってくれた?」

「うんっ」

 顔を見合わせて笑った二人は、しばらく水溜りを観察し続けた。

 あっという間に、おやつの時間になった。

 二人は改めて気合を入れなおす。男の子は、好奇心いっぱいの目でお母さんを見上げた。

「よし。じゃあ、雨の日の楽しいこと探しを再開しようか。準備はいいかな?」

「おー!」