その日は風が冷たかった。
隣を歩く彼女は肩を竦めると、マフラーを口元まで引き上げた。色白の肌に蜜柑色のマフラーが映える。彼女の瑞々しさを表すような色だった。
私は自身のポケットにホッカイロを入れていたことを思い出す。急いでポケットからそれを取り出し、彼女に差し出した。彼女は驚いた表情で受け取った後、頬を緩めた。
「ありがとう、温かいね」
この小さなやり取りが、私たちの間に心地よい繋がりを生んだ。彼女はホッカイロを片手に持ったまま駆け出した。蜜柑色のマフラーが跳ねるように動く。
その光景を見ながら、私は自然と目を細めていた。