【短編】黄泉路の旋律 夫を亡くした女の話(2) 気づけば女は自室にいた。手に持っていたはずの懐中時計はない。机の中から自身の日記帳を取り出し、最後の頁を確認する。夫が死んだ一年前の日付だった。 夢見心地のまま、玄関へ足を進める。家の前では慌ただし... 2023.09.09 2024.04.21 【短編】黄泉路の旋律
【短編】黄泉路の旋律 夫を亡くした女の話(1) ちりん。 誰の涙雨か。次第に激しくなる天候の中、大通りを進む葬列がある。先導するのは親類縁者の男たちだ。駕籠かきが籠と棺を担ぎ、提灯、花、放鳥、香炉を持った者が順に続く。位牌を持っている男が喪主だろ... 2023.07.17 2024.04.21 【短編】黄泉路の旋律
【短編】鬼と千代の約束 第8話 二人の約束 涙が止まると気持ちも落ち着いてくる。 改めて考えて、十年って長い。 そう鬼さんに伝えると「誤魔化されなかったか」という目で見られた。 一年近く鬼さんを見てきたのだ。無表情に見えてもわたしにはわか... 2023.07.01 【短編】鬼と千代の約束
【短編】鬼と千代の約束 第7話 大木の上から 桜の花びらがひらひらと舞う。 顔を下に向ければ、町のあちこちでピンク色の絨毯が作られている今日この頃。 ◇ 今日は鬼さんが大木の上のほうに連れてきてくれた。 片腕で抱えられて、枝のところ... 2023.06.30 【短編】鬼と千代の約束
【短編】鬼と千代の約束 第6話 こわくない はんかち、ティッシュ、飲み物、お菓子……。 「よし」 いつもより重くなったリュックを背負い、玄関に向かう。 外に出て数歩進んだところで振り返った。決意を胸に、小さく呟く。 「行ってきます」 ... 2023.06.29 【短編】鬼と千代の約束
【短編】鬼と千代の約束 第5話 祭神 「あの方と何かあったのかい?」 お爺ちゃんの言葉に目をぱちくりさせる。 ここはお爺ちゃんの部屋。 障子から入ってくる日の光は淡く室内を照らす。角度によっては、お爺ちゃんの白髪が銀色にも見えた。 ... 2023.06.28 2023.06.29 【短編】鬼と千代の約束