【短編】鬼と千代の約束

【短編】鬼と千代の約束

第8話 二人の約束

涙が止まると気持ちも落ち着いてくる。 改めて考えて、十年って長い。 そう鬼さんに伝えると「誤魔化されなかったか」という目で見られた。 一年近く鬼さんを見てきたのだ。無表情に見えてもわたしにはわかる。 ...
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第7話 大木の上から

桜の花びらがひらひらと舞う。 顔を下に向ければ、町のあちこちでピンク色の絨毯が作られている今日この頃。    ◇ 今日は鬼さんが大木の上のほうに連れてきてくれた。 片腕で抱えられて、枝のところまでひと...
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第6話 こわくない

はんかち、ティッシュ、飲み物、お菓子……。「よし」  いつもより重くなったリュックを背負い、玄関に向かう。 外に出て数歩進んだところで振り返った。決意を胸に、小さく呟く。「行ってきます」    ◇ そ...
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第5話 祭神

「あの方と何かあったのかい?」 お爺ちゃんの言葉に目をぱちくりさせる。 ここはお爺ちゃんの部屋。 障子から入ってくる日の光は淡く室内を照らす。角度によっては、お爺ちゃんの白髪が銀色にも見えた。 わたし...
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第4話 すれ違い

担任の先生が台風に備えるよう注意喚起している。 わたしはその声をぼんやりと聞いていた。 帰りの会が終わると、途端に周囲がざわざわし始める。みんなに挨拶をしながら、すぐに帰路についた。 いつもの道を一人...